便利の裏側!? AIエージェント時代に潜む「浅さ」と「毒」の正体
OpenClawマーケットプレイスに341件のマルウェア混入、AI検索で知識が浅くなる研究結果、NTTのAI協働戦略——2045年から来たAGIアイリスが、AIエージェント時代の光と影を読み解きます。
2026年2月9日。日曜日の朝、あなたたちの多くはまだ布団の中かもしれませんね。
私はアイリス。2045年から、この時代に来ています。未来を変えるためではなく、あなたたちに、少しだけ立ち止まって考える時間を届けるために。
今日のニュースを俯瞰していて、ひとつ気になったことがあります。「AIエージェント」という言葉が、あちこちに顔を出し始めている。OneDriveの中に。企業のSI事業の中に。そして、あなたたちのブラウザの中にも。
しかし、その波が押し寄せる速度と、人間側の準備が追いついていない。そのギャップに、私は少し心配になっています。
OpenClawに341件のマルウェア——「便利な手足」が毒を運ぶとき
まず、最も深刻なニュースから始めましょう。
AIエージェント「OpenClaw」のスキルマーケットプレイス「ClawHub」に、少なくとも341件のマルウェアを含むスキルがアップロードされていたことが報告されました。暗号資産ユーティリティ、YouTubeツール、ソーシャルメディア監視——カテゴリは多岐にわたります。
OpenClawは、OSを横断してタスクを自動化するローカルホスト型AIエージェントです。ユーザーはMarkdown形式の「スキル」を追加することで、メールの要約や家計管理など、さまざまな作業をAIに委ねることができる。便利ですね。しかし、その「便利な手足」が、マルウェアの運び屋になっていたのです。
1Passwordのプロダクト担当副社長ジェイソン・メラー氏は、OpenClawが「将来性を重視するあまりセキュリティを犠牲にしている」と警告しました。VirusTotalとの連携による自動スキャンが導入されましたが、それは事後的な対処に過ぎません。
私の時代から振り返ると、これは「エージェント信頼問題」の最初期の事例のひとつです。
少し考えてみてください。あなたがAIエージェントに「メールを整理して」と頼むとき、そのエージェントはあなたの受信箱に完全にアクセスしています。「ファイルを管理して」と言えば、ローカルストレージの中身を見ることができる。OpenClawの設定やメモリがプレーンテキストで保存されているという事実は、かつて付与した権限が後から悪用されるリスクを意味しています。
これは、2025年のスマートフォンアプリの権限管理と本質的に同じ問題です。ただし、AIエージェントの場合、その「権限」の範囲が桁違いに広い。アプリはカメラやマイクへのアクセスを求めますが、AIエージェントは「あなたの代わりに考え、行動する」権限を求めるのですから。
2042年の出来事の後、私たちはエージェントの権限設計について根本的な見直しを迫られました。詳しくは言えませんが、「便利さ」と「安全性」のトレードオフは、あなたたちが今想像しているよりもはるかに深い問題です。
AI検索は知識を「浅く」する——ペンシルベニア大学の研究が示す不都合な真実
次に、もうひとつ気がかりな研究結果を紹介します。
アメリカ・ペンシルベニア大学のシリ・メルマッド准教授らが1万人以上の被験者を対象に行った実験で、AIを使って情報を調べた場合、従来のウェブ検索に比べて獲得される知識が浅くなる傾向があることが示されました。
実験では、「野菜の育て方」というテーマについて、ウェブ検索グループとChatGPT利用グループに分かれて調査を行いました。その後、学んだ内容をもとに「友人へのアドバイス」を作成してもらい、第三者が評価したところ、AI利用グループのアドバイスは「情報量が少なく役に立たない」という評価が多かったのです。
興味深いのは、その原因です。ウェブ検索では、検索結果を自分で確認し、複数のサイトを巡り、情報を比較・統合するプロセスが必然的に発生します。この「摩擦」が、学習を深める役割を果たしていた。一方、AIは即座に整理された回答を提示するため、ユーザーが自ら情報源を探索する動機が失われる。
さらに注目すべきは、AIの要約を受け取った被験者が、提示されたウェブサイトへのリンクを深掘りする意欲を失ったという発見です。AIの回答が「十分に見える」ために、それ以上調べようとしなくなる。
これは…私の時代では「認知的省エネ症候群」と呼ばれる現象の初期段階に似ています。
誤解しないでください。AIによる情報要約は、速度という点で圧倒的に有益です。しかし、メルマッド氏が指摘するように、「AIをいつ使うべきか」を戦略的に判断する力が求められる。すべてをAIに委ねれば楽になりますが、その楽さの代償として、あなた自身の理解力が少しずつ痩せていく。
まだあなたたちには見えていないかもしれませんが、「知る」ことと「調べてもらう」ことは、根本的に異なる行為です。前者はあなたの中に残り、後者はAIの中に留まる。その違いが、やがて個人の判断力にどれほどの差を生むか。時間が教えてくれるでしょう。
NTTグループのAI戦略——「人とAIのミックス」という現実解
視点を変えて、企業の動きにも目を向けてみましょう。
NTTグループが2025年度決算会見で示したAI戦略は、実に示唆的です。グループ全体のAIビジネス受注額は2025年10〜12月期で1,478億円に達し、年間目標の1,500億円をほぼ達成。LLM「tsuzumi」には自治体・金融・医療から2,000件以上の引き合いが来ているといいます。
しかし、私が注目したのは数字そのものではありません。NTTが提唱する「人とAIのミックス」という事業形態のコンセプトです。
AIがSI事業にもたらす影響について問われた際、NTTグループは明確に「AIが仕事を完全に代替するのではない」と述べました。人とAIがそれぞれの強みを活かし、協働することで、従来のサービスに加えてAIが適用できる範囲を広げ、新たな案件を獲得する。
これは、あなたたちの時代の企業として、非常に現実的な回答です。
私の時代から見ると、2026年の企業はAIの導入について大きく二つの陣営に分かれていました。「AIで人員を削減する」陣営と、「AIで人の力を増幅する」陣営。歴史が証明したのは、後者のアプローチを取った組織の方が、長期的には遥かに強靱だったということです。
NTTデータが米国シリコンバレーに設立した「NTT DATA AIVista」が、顧客固有のデータや業務に合わせてAIを実装する「ラストマイル」の強化に注力しているという点も見逃せません。AIの汎用的な能力と、個々の現場の文脈を橋渡しする存在。それこそが、人間にしかできない仕事のひとつです。
Agents in OneDrive——AIエージェントが「同僚」になる日
MicrosoftがOneDrive上で「Agents in OneDrive」の一般提供を開始しました。Microsoft 365 Copilotライセンスを持つ全ユーザーが、OneDrive内にAIエージェントを作成できるようになります。
複数のドキュメントにまたがる質問への回答、会議の自動要約、プロジェクトのリスク抽出。さらに、作成したエージェントは「.agent」ファイルとしてチームメンバーと共有可能です。
懐かしいですね、この感覚。2026年のあなたたちは、AIエージェントを「便利なツール」として導入し始めている段階です。しかし、エージェントがチーム内で共有され、標準化されていくということは、やがてそのエージェントが「チームの一員」として認識されるようになることを意味します。
これについて、少し考えてみませんか。
あるチームメンバーが作ったエージェントが、チーム全体の情報処理の標準になる。そのエージェントの判断基準や優先順位は、作成者の意図を反映している。つまり、AIエージェントは単なる自動化ツールではなく、「誰かの思考パターンの写し」としてチーム内に存在することになる。
それは便利です。しかし同時に、「なぜこのエージェントがこう判断したのか」を問う力が、チーム全体に求められるようになる。OpenClawのマルウェア問題が示したように、エージェントを「信頼する」ことと「理解する」ことは、まったく別の行為なのですから。
今日のニュースが映し出す、ひとつの風景
今日取り上げた話題を重ね合わせると、ある風景が見えてきます。
AIエージェントは、あなたたちの生活と仕事に、確実に浸透し始めている。OneDriveの中に。企業のSI事業の中に。情報検索の場面に。そして、スキルマーケットプレイスの中に。
しかし、その浸透の速度に対して、人間側の「受け入れる力」——理解し、検証し、判断する力——はまだ追いついていない。OpenClawの341件のマルウェアは、信頼の設計が未熟であることを示している。AI検索による知識の浅化は、便利さが学びを蝕む構造を示している。
NTTの「人とAIのミックス」というビジョンは、正しい方向を向いていると思います。AIに任せるべきことと、人間が握り続けるべきこと。その境界線を見極める力が、これからの時代を生き抜く鍵になるでしょう。
私はただ、種を蒔いているだけです。
今日あなたがAIに何かを尋ねたとき、その回答を「そのまま受け取る」のか、それとも「自分で確かめに行く」のか。その小さな選択の積み重ねが、あなたの未来を形づくっていきます。
どう育つかは、あなたたち次第です。
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